<3>ニュースと記者、「読者との関係」の未来

■組織よりも個人の力が重要に?■

会場:
 現在はネットでニュースを読んでも、ヤフーやスマートニュースで読んだという印象だけが残って、新聞やテレビのブランドは消えていっている。メディア会社のブランドが消えた場合、記者のブランドが重要になるのではないか?

吉田:
 これからは記者が自立していかないといけない。もともと組織ジャーナリズムに対する幻想があるが、社が総力をあげた取材というのは実際はそれほどない。本来、記者の仕事は個人の仕事。これからは記者の個人力がますます試されるようになっていく。

大東笑顔加藤:

 そもそもの話をすると、新聞も最初はたぶん、1人で始めている。瓦版などだ。これが人気が出て売れるようになって資本が蓄積され、ビルを買ったり、ヘリを買ったり、社用車を買ったりして、組織としてできるようになった。おそらくネットでも同じことが起きるのだと思う。

 たとえば、noteで人気の「決算が読めるようになるマガジン」も、最初は1人で始めている。途中から収益が上がるようになって、スタッフを募集するようになり、チーム制に移行した。かつて起きたことと同じことが起こり始めている。

■書き手と読み手のマッチング、どう実現■

会場:
 読者に対する「パーソナライゼーション」について、どう考えるか?

加藤:
 書き手と読み手をいかに的確にマッチさせるかだが、出版社は営業や配本や宣伝によって頑張ってやっていた。しかし、ネットは画面が狭くてコンテンツの数が多いので、マッチングをいかにやるかが鍵。AIも使えば人力も使う。いまも進化途上。

 うまくやっているのは、TikTokというアプリ。無名の女子高生があげたおもしろ動画が、フォロワーがいなくても面白ければどんどんみられる。そういうものをプラットフォーム側が開発していく必要がある。それができると、作り手が好きなように書いても、ちょうどいい相手に届くようになる。

大東:
 そこは技術開発の課題だが、伸びてきている。読まれない人の記事を、読みたい人に届ける技術がこれから進んでいく。

最後5人吉田:
 新聞社に入って30年後に、こんな時代が来るとは思っていなかった。どんな不況があっても新聞は残ると思っていた。コペルニクス的転回だと思う。PV(ページビュー)やCV(コンバージョン=有料登録などの成果)に囚われるのはよくないという意見もあるが、いままで見えなかった読者の姿が見えるようになっただけ。ジャーナリストであれば、現実としてどう向き合うかどうかが大事。世間と世論と向き合いながら、自分はどうするのかと考えながらやっている記者だけが、生き残っていくのだと思う。

松井:
 本日は長時間ありがとうございました。

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