<1>サブスクリプションで広がるコンテンツ課金

左から佐々木啓悦、吉田貴文、大東洋克、加藤貞顕の各氏。

ディスカッションに参加した(左から)佐々木啓悦、吉田貴文、大東洋克、加藤貞顕の各氏

 早稲田大学で9月14日に開催されたシンポジウム「ニュースは『サブスク2.0』で甦るか?」。第2部のパネルディスカッションでは、デジタルメディアの「サブスクリプション」の可能性について、登壇者から率直な意見が語られた。司会は早稲田大学メディア文化研究所の松井正・招へい研究員が務めた。主なテーマごとに、ディスカッションの要旨を紹介する。

■「デジタルコンテンツにお金を払う」は定着したか?■


松井:

 1995年にインターネットの商用利用が本格化して以来、ネットのコンテンツは無料で読める時代が続いてきたが、最近になって「サブスク」という言葉が一般にも知られるようになった。デジタルコンテンツにお金を払う行為は、定着したと思うか。

加藤:
 定着したと言っていい。LINEのスタンプやソーシャルゲーム、iPhoneアプリもデジタルコンテンツ。ウェブでコンテンツに課金するのは普通になっている

佐々木:
 ドコモの「iモード」の時代から、多くの人がコンテンツにお金を払ってきたが、最近はもともと料金の回収手段を持っていなかったプレイヤーも、新しい仕組みが出てきたことで回収できるようになった。

吉田:
 「論座」は有料課金メディアだが、新しいコンテンツだけでなく、古いコンテンツもよく売れる。それで会員になってくれる。若い人は自然にネットでお金を払う。その代わり、本や新聞にはお金を払わなくなってきた。トレードオフだと思う。

大東:
 10年前からすると、そこにお金を払うのかというところにもお金を払うようになっている。いままで100円で売れていたものが、1000円で売れるようになってきた。インターネットでお金を払うことの許容範囲が広がった。noteや論座のようにコミュニティを作ることで、信頼や共感にお金を払う人が増えている。ネットメディアに対する支払いも、ただ単にコンテンツを読むことに対して500円を払うのではなくて、ロイヤルティや共感を感じることも含めて500円を払うようになっている。

加藤:
 「note」では、課金の最低金額は100円、最高金額は5万円(プレミアム登録の場合)と幅が広い。一方、アナログのコンテンツの値段は固定されている。本は500円〜3000円、新聞は5000円前後が一般的だ。でも、弁護士ならば10万円を払うし、学校ならば100万円でも払う。コンテンツの値段は差があってもいい。1万円で超コアな情報を売っている人もいる。noteでは、もっと高い値段でプログラムのコードを売っている人もいる。そしてnoteの場合、クリエイターの手元に9割ぐらい入るので、それなりの収益になる。

■売れるコンテンツ、読まれるコンテンツとは■

5人吉田:
 売れるコンテンツは、いま流行っているもの。いまであれば日韓問題。左右どちらの立場からも読まれる。あとは、キャラクターが強い著者の記事。常に当たるわけではないが、打率は高い。記事の見出しやリード文の編集によって、読まれる記事を作ることができる。

松井:
 PVを稼ぎやすい記事と、ロイヤルユーザーを獲得しやすい記事は違うのか?

大東:
 ロイヤルティを高めたり、有料課金されるようにしたりするには、ただ一発の記事ではなく、連続してある傾向をもった記事を提供することが重要だと考えられる。特定のジャンルで記事を出し続けることで、ユーザーのロイヤルティを高められる。メディアのコミュニティに共感や信頼を持ってもらうことが、お金につながる。読者と密接な関係を作ることが重要だ。

吉田:
 「論座」では、今年の春から山本太郎氏の記事をバンバン出したら、参院選のあった7月に会員がワーッと増えた。

松井:
 NYTの有料会員が増えたのもトランプ大統領との敵対関係がある。集中的な特集は重要かもしれない。

■dマガジンは出版社を救うのか■

松井:
 ヤフーに記事配信をしても、その配信料だけで新聞社が会社を支えられはしない。dマガジンも、それだけで出版社がやっていけるわけではないのではないか。

佐々木:
 もともと雑誌は1兆円以上の販売収入があって、それに広告収入もあった業界。dマガジンは数百万人のユーザーで、月400円。前者と比較すると桁が違う。落ち込みを補う手段の一つでしかないのは事実。出版社の立場としては、落ち込みを補うため一旦乗っからざるを得なかった、というところも大きかったのではないかと思う。

佐々木と吉田たて480加藤:
 出版社の人は、最初はdマガジンについて半信半疑だったが、最近は「dマガジンが意外とバカにならない」と言っている。ただ、長期的に見ると雑誌市場は縮小している。これは佐々木さんへの質問だが、今後、紙の雑誌が減っていく中で、将来的にdマガジンはどうするのか?

佐々木:
 紙の雑誌が減っていくのは間違いない。今後、たとえばテキストベースで見られるようにしていくとか、ユーザーの情報も得ながらレコメンドしていくという方向もあると思うが、まだそこまで考えられていない。

松井:
 いまは紙からデジタルへの過渡期。新聞や出版はデジタルになると収益が大きく下がるので、全面的にそこへは行けない。ヤフーやLINEやスマニューに頼るような状態になっているが、それだけでは会社を支えられない。

<2>有料の「ニュース読み放題」サービスの可能性