坂田さん

坂田さんはスクープの数々について、舞台裏も交えて具体的に語ってくれた

 「メディアの将来像を考える会」は2017年9月12日午後7時から、早稲田大学3号館702教室で第78回例会を開き、週刊文春記者の坂田拓也さんをゲストスピーカーに迎え、「週刊文春専属記者が語る~スクープ連発の舞台裏」と題して講演いただきました。※取材上の都合により、坂田さんの写真は掲載しません。

 坂田さんはまず、週刊文春の陣容について、取材と記事執筆を担当する「特集班」は計約40人で5班構成、うち専属記者は30人弱いると紹介。毎週木曜日にネタを出し合う会議があり、一番の苦労は「毎週1人5本のネタを出さなければならないことだ」と明かしました。40人が5本ずつ出す計200本のネタのうち、採用されるのはごくわずかで、競争も厳しいそうです。

 週刊文春は2016年1月以降、「ベッキー31歳禁断愛 お相手は紅白初出場歌手27歳!」を皮切りにスクープを連発し、「文春砲」と呼ばれるようになりましたが、坂田さんは「取材対象者が口を開いてくれることが増えたと思うが、文春を名乗るだけで過剰反応されたり目立ったりもするので、悩ましい」と述べました。第2弾の「重大疑惑『甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した』実名告発」については、「掲載までに1年かかった調査報道。担当した同僚記者の勘と根気はすごいと思った」と語りました。

坂田さん また、最近のスクープ「『総理のご意向』は本物です 文科省前事務次官前川喜平 独占告白」に関して、前川氏が「出会いバー」に通っていたとの読売新聞の記事に触れ、「読売の信頼が大きく棄損されたのではないか」と語りました。今年9月に出した「山尾志桜里 イケメン弁護士と『お泊まり禁断愛』」については、「幹事長に内定した夜に弁護士とホテルに行ったのは、どうしようもない」と山尾氏の行動を酷評しました。

 坂田さんご自身が担当した記事としては、「ショーンK<ショーン・マクアードル川上(47)>の嘘」のほか、「『内部資料』入手 ヤマダ電機『過労死ライン』店長が46人もいた!」「積水ハウス『63億円サギ犯』から逃れた不動産業者の証言」などを挙げました。ヤマダ電機の記事は名誉棄損で訴えられたものの、結局は和解したと説明。「裁判長が和解を提案した。文春の負担はゼロで、実質勝訴と思っている。最近の裁判はマスコミに厳しい印象」と、苦しい胸の内を明かしました。

 週刊誌ジャーナリズムに関しては、「毎週忙しく、先週取材したことも忘れ、正直、考える余裕もない。ジャーナリズムを立ち止まって考えたことはない」と漏らしました。最後に、不倫を含むスキャンダル報道の是非に触れて、「不倫は世間も絶対悪とは思っていないのかなと。世間は不倫に飽きたとも言われるが、反響は大きい」と述べた上で、「新谷学編集長には『人間を書け』と言われている。不倫もこれに入る。私が担当することの多い経済記事でも、人を書けるようになりたい」と締めくくりました。

坂田さん講演 講演後の質疑応答では、「民事訴訟でこれは負けるからやめたとか、書き方を変えたというケースはあるか。訴訟の賠償額が高くなっているが、それによって消極的になるところはないのか」「ネタを集めてくる際の編集方針、ミッションや基準は何か」「取材経費を100万円規模で使えるとか、記者は50歳定年というのは本当か」など活発な質問が出ました。

 これに対し坂田さんは、「ここが法的にまずいから表現を変えるとか、掲載前に弁護士と相談することは基本的にない。賠償額が高くなったからといって掲載を見送っているのかというと、明確なものはない」「私は面白いとか、この人は悪いとかを判断の基準に出している。記者の中には売れると判断して出す人もいる。その辺は学ぶ必要があると思う」「経費は厳しくなっていて青天井ということはないが、他誌と比べるとまだ使える方かもしれない。でも時間もかけて取材している」などと答えました。

 講演・質疑の後は、26号館15階のレストラン「森の風」に場所を移して懇親会を開催。坂田さんを囲んで議論が続きました。

■坂田氏の略歴
 1970年生まれ、大分県出身。明治大法学部卒業。ブラジル・サンパウロ市の日系新聞「サンパウロ新聞」の記者を1年務め、月刊誌「財界展望」記者、フリーライターを経て、2008年から「週刊文春」記者。主に、経済問題、経済事件の取材を続けている。昨年は、ショーンKの経歴詐称問題を担当。直近では、将棋界で人気の「ひふみん」こと加藤一二三九段の取材を担当。著書に「経済ニュースの裏と表が分かる本」(ぱる出版)など。