野村さん

ローカル局の自立の必要性を訴える野村和生さん

 「メディアの将来像を考える会」は2017年5月9日午後7時から、早稲田大学26号館1102会議室で第75回例会を開き、名古屋テレビ取締役の野村和生さんをゲストスピーカーに迎え、「地上波ローカル局が考える次世代サービス」と題して講演いただきました。

 野村さんはまず、タイムシフト視聴の増加や若年層のテレビ離れなど放送を取り巻く経営環境が厳しさを増す中で、「キー局はこれまでのようにローカル局を守ってはくれない」として、ローカル局の自立の必要性を強調しました。その上で私見と断りながら、名古屋テレビの進むべき方向性として、1)地上波放送ローカル局として「地域を生き抜く事業」の拡充 2)全国向けの有料コンテンツを核とした「市場拡大型事業」の推進——の二つを挙げました。

 後者のコンテンツ事業については既に、10年に設立した100%子会社の名古屋テレビネクストで「エンタメ~テレ」と「ダンスチャンネル」の二つのチャンネルを開局していることを紹介。これまでの経験を踏まえ、「お金をかけた地上波(無料放送)コンテンツは、有料放送では必ずしも受けない」「有料の正しい姿は専門チャンネルである」ことが分かってきたと話しました。

 併せて、地上波の4K化に備えて2Kコンテンツの4K化を進めてアーカイブにしつつ、「通信」の領域、特に動画配信への積極的な展開および将来の同時配信へも対応していく姿勢を示しました。

野村さん

激変する放送環境の中、意欲的な事業を展開する名古屋テレビの取り組みを紹介する野村さん

 名古屋地域限定の無料放送サービスと全国向けの有料コンテンツサービスとでは「ベクトルが別方向」であるため、二つを同時に実行できるのか、社内の意識・知見のバラツキを解消できるのか、通信系を中心とする知識の高度化・専門化に対応できるのかなどの課題があると指摘。前者ではチームワークなどの組織貢献力、後者では創造的・戦略的思考や決断力などの起業家精神と、それぞれ必要とされる資質や組織戦略が異なることから、人材の振り分けや戦略系・技術系の人材不足に悩んでいると打ち明けました。

 このため、17年4月に名古屋テレビベンチャーズ合同会社を設立し、12億円の運用資金を投じて、2000~3000万円規模の事業を数多く立ち上げてベンチャー会社との連携にも乗り出したことを明かしました。

野村さん 講演後の質疑応答では、「名古屋テレビネクストの事業規模は」「コンテンツビジネスについてローカル局として考える部分をどこに求めるか」「エンタメ~テレの内容を詳しく教えてほしい」など活発な質問が出ました。

 これに対し野村さんは「売り上げは10億円弱。ずっと赤字会社で、エンタメ~テレはようやく単年度黒字になった。今年度には全社的に黒字になりそうだ。後発のダンスチャンネル単独では19年度の黒字化を目指す」「ダンスやエンタメなど、東京がやらない、地上波がやりにくいところを狙っていく。放送を前提として作るか、通信を前提として作るか、意識の変え方が大事だ」「“とがった番組”と称しているが、タレントは知名度の高い人ではないので、企画が勝負。『妄想のすすめ』は女性の官能小説家に本音トークをしてもらうが、エロ路線はやらない。境目を狙っている」などと答えました。

 講演・質疑の後は、15階のレストラン「森の風」に場所を移して懇親会を開催。野村さんを囲んで議論が続きました。

■野村氏の略歴 1957年(昭和32年)生まれ。1981年(昭和56年)早稲田大学法学部を卒業後、名古屋放送(現 名古屋テレビ放送)株式会社に入社。営業・編成・技術・コンテンツ事業系の5部署で部長を経験した後、2010年「シーエスGyaO」を事業譲受した名古屋テレビネクスト株式会社の代表取締役社長に就任し、有料チャンネル事業を手がける(2016年まで取締役会長)。名古屋テレビ放送に帰任後、2014年に取締役に就任。2015年からは取締役東京支社長として渉外・東京営業・次世代放送を担当している。