「変革は業界の周辺から起きる」と語る清水さん

「変革は業界の周辺から起きる」と語る清水さん

「メディアの将来像を考える会」は2017年4月11日午後7時から、早稲田大学26号館1102会議室で第74回例会を開き、清水メディア戦略研究所代表取締役の清水計宏(かずひろ)さんをゲストスピーカーに迎え、「2017年~近未来のメディアを取り巻くテクノロジートレンド」と題して講演いただきました。

清水さんはまず、約30年のメディア関連の取材経験を踏まえて、「未来は現在の延長線上にはなく、現在を否定する様相で現れがちである。変化、変革は外縁・周辺から起きる」と指摘。従って、未来を予測する最も簡単な方法は、現在在るものではなくなる、と(予測)することだとの考え方を示しました。また、変革や革新は業界の中心ではなく周辺から起こりがちだが、企業内にR&D(研究開発)が根付いている場合には中心から起こることもあり、現業と関係のない研究をしっかりやることが大事だと強調。一方、新聞、出版、音楽業界などR&Dのあまりない企業・業界は枠組みが変わってしまうと弱りがちで、R&Dは時代への適応力と外部攻撃に対する免疫力だと述べました。

また、企業も人間も10代のころのように冒険的なことをやっていないと老化を早め、ときに現状維持も難しくなってしまうとして、日本企業の地盤沈下を例に挙げて「アドベンチャラスな気質がなくなったところはもう駄目だろうと判断する」と明かしました。

清水さん2017年のテクノロジートレンドについては、「X+IоT+Big Data+AI=Smart Products」という公式を提示し、特に「AI音声アシスタントが最大のトレンドになるのではないか」と予測。コミュニケーションの基本は音声であり、テレビや携帯電話の普及要因の一つであるとし、さまざまなアプリやデバイスに音声によるコントロールができるアマゾンの「Alexa」(Echo)やグーグルの「Assistant」(Home)の有望性を語りました。

アマゾンはAlexaをサードパーティーに開放し、これを活用する企業・個人に総額1億㌦の基金を用意。構築までに4~5年かけた結果、聞き手の意向を理解して検索することが可能となるところまで来たといいます。清水さんは、その結果、「新聞の紙面にこだわる必要がなくなり、AIの音声で聞き手が望むようにニュースが放たれるようにもなる」として、音楽やニュースの聞き方がAI音声アシスタントで変わってしまうだろうと予想しました。

ディスプレイも人の視覚そのものに近づき、空中に投影できるようなホログラフィックなものに進んでいくとし、またテレビ分野ではインタラクティビティ(双方向性)が非常に重要になってくると指摘。メディアは、現在の「消極的な多数」に向けたマスメディアから、「積極的な少数」に向けた新しいメディアに変わっていき、マスメディアは将来も残るものの、「ワンオブゼム、いろいろなものの中の一つ」になるとの見方を示しました。

清水さんゲームの世界では、三人称ではなく、画面に登場する主人公の視点つまり一人称の視点が以前から主流となっていて、これがさまざまなメディアや製品に広がっているが、今後は自身の在り方を自由に選択できる「無人称」化へ移行するのではないかと語りました。

講演後の質疑応答では、「新聞社はどうなるのか」「今後は中世のようなモデルが復活するのではないか」「日本企業がやっているのはIoTではない。インターネットではなくイントラネットではないか。またガラパゴスになるのでは」など活発な質問が出ました。

これに対し清水さんは「こんなにたくさんの出版社は生き残れない。新聞社や出版社は約30年前の規模と精神に立ち返ればいい」「インターネットが歴史上のさまざまな経済や暮らし方を復活させる中で、中世的な人間的要素もある程度復活するかもしれない。今の仕事の形態・形状を続けたければ、変わっていくか、もしくは規模を小さくするしかないのではないか。拡大再生産による肥大化が衰亡に導きがちだからだ」「おっしゃる通りで、(単に)ブームに乗って既存のテクノロジー、AI、IоT、ビッグデータが使われているケースも結構あることは否めない」などと答えました。

講演・質疑の後は、26階のレストラン「森の風」に場所を移して懇親会を開催。清水さんを囲んで談笑が続きました。(了)

■清水氏の略歴 1953年(昭和28年)静岡県生まれ。大阪外国語大学卒業後、77年日本楽器製造株式会社(現ヤマハ株式会社)入社。82年同社退職後、テレコミュニケーション、コンピューター関係の専門紙、雑誌の編集者・記者を経て、89年映像新聞社入社。90年に映像新聞編集長、92年取締役・編集長。2001年10月に映像新聞社退社。同年12月に有限会社清水メディア戦略研究所を設立、代表取締役社長。政府・企業のメディアに関係するコンサルティング、業界調査、将来予測をしている。
主な著書として『マルチメディアへの挑戦』(ソフトバンク刊)、『世界のコンピュータマップ~’93/’94’/95各年版』(ジャストシステム、共著)、『テレビのIT革命(上・中・下巻)』などがある。月例で実施しているBUSINESS HINT!セミナーでは、多くの企業提携 と新規事業が生まれている。