メディアの将来像を考える会第65回例会は、4月21日(水)午後6時半から、パケットビデオ・ジャパン社長の加藤徹さんを講師にお迎えして早稲田大学3号館703教室で開催されました。

加藤さんは1988年東京工業大学大学院卒。住友商事に入社後、ソフトバンクやジュピターテレコムを経て、2015年にパケットビデオ・ジャパンの取締役社長に就任しました。

加藤徹さん「動画配信市場と“bonobo(ボノボ)”事業戦略」と題した講演では、プロが作った有料のコンテンツを中心に話したいと断った上で、まず北米における動画配信サービスの現状と日本市場の動向を紹介。北米ではアマゾンやアップル、グーグル、ネットフリックスなどのビッグネームが参入し、課金のタイプとしては都度課金型のTVOD(ティーボット)から定額課金型のSVOD(エスボット)へ、またスクリーンはパソコンからスマートフォンへと移行しつつあると説明しました。

日本市場の動向については、インフラ系ではドコモのdTVやソフトバンクと提携するネットフリックス、ポータル系ではヤフーのGYAO!、グーグルプレイ、アマゾンビデオ、その他ではHULUなどが大きくない市場に乱立しているが、体力のあるインフラ系が力を伸ばしていると指摘。日本の有料動画配信サービス市場の規模は2015年段階では1440億円だが、2019年には2020億円まで伸びるとの予測を示しました。利用者数は2015年には960万人に増え、特に定額課金型が伸びていると説明。これに対し、DVDなどパッケージソフトの売り上げは2000億円を切るなど、落ち込んできていると述べました。

加藤徹さん次に、加藤さんが展開している動画配信サービス・ボノボについて、2015年9月30日に映画会社など6社と契約して映画配信サービスを開始。同年12月1日には、テレビ局やアニメ会社なども含む34社の参加を得て、映像情報ポータルサイトとして本格サービスを始めたと紹介しました。

 ビジネスモデルは、いわゆるスタジオ直営型の配信モデルで、都度課金型。映画会社などのコンテンツホルダーと直接契約し、ボノボはプラットフォーマーとして、映像配信の代行サービスを行うというものです。配信タイトル数は2016年3月末現在で、4500本から5000本に上り、今後はアニメにも力を入れたいとのことでした。今後の施策としては、ドコモやヤフーなど外部の決済提供事業者との提携や、ディズニーなどとの連携強化による魅力的なコンテンツ作り、シリアルIDを発行・管理する「ボノボコネクト」の導入による顧客情報の蓄積などを挙げました。

講演を受けて、日本の動画配信市場の特色や今後の行方などについて、活発な質疑応答が交わされました。加藤さんは「日本のマーケットは総じて非常に保守的だ。一部プロダクションのコンテンツはマーケットに出てこない」「若者は経済観念が発達していて、非常にケチだ(コンテンツにお金を払わない)」「SVODもTVODも、淘汰というか合従連衡による集約が進むのではないか」などの見方を披露しました。動画配信市場の拡大に向けた今後の課題については、「ディストリビューターが儲かるだけでは駄目で、それでは映像産業全体が沈んでしまう。クリエーターにもお金が回る仕組みが必要だ」と強調しました。

約2時間にわたっての講演と質疑の後、場所を早稲田大学26号館のレストラン「森の風」に移して“延長戦”。加藤さんを囲んで12人が参加しました。

なお、1月に急逝された会員清水真さん(昭和女子大准教授)の遺稿「つくば市・土浦市を拠点とする地域紙『常陽新聞』による『地域ジャーナリズム』の実践に関する研究」(立教大学社会学部『応用社会学研究』2016年3月発行No.58)、「地域ジャーナリズム」の実践と新聞ビジネス」(昭和女子大学『学苑』平成28年2月発行904号)の抜き刷りがご遺族から贈られ、当日出席の皆さんに配布しました。残部が若干ありますので、ご希望の方はお知らせ下さい。

次回例会は6月の予定です。テーマ、日程などが決まり次第お知らせします。(幹事)