山本孝さん

交通広告の未来について語る山本孝さん

 「メディアの将来像を考える会」は2017年3月14日午後7時から、早稲田大学26号館1102会議室で第73回例会を開き、ジェイアール東日本企画デジタルサイネージ推進センター長の山本孝さんをゲストスピーカーに迎え、「交通広告のチャレンジ~2020年に向けたデジタルサイネージ」と題して講演いただきました。

 長年にわたり駅や電車内のデジタル広告に携わってこられた山本さんはまず、交通広告の媒体は中吊りやトレインチャンネル、ステッカーなどの車両メディアと、サインボード、ポスターなどの駅メディアに大別されると説明。その強みとして、生活者動線に沿って繰り返し接触できる「反復接触性」や、直前の接触により購買行動につながりやすい「リーセンシー効果」などを挙げました。

 交通広告の現況については、15年には日本の総広告費の3.3%(約2000億円)を占め、金額的にはほぼ横ばい傾向が続いていると指摘。首都圏に限ればジェイアール東日本企画の媒体売上高は420億円ほどで、このうちデジタルサイネージは約23%と4分の1に迫り年々増加していると述べました。

山本さん 続いて山本さんは、「交通広告はスペース(場所)のマネタイズであり、一番大事なのはスペースである」と強調しました。

その上で、02年から山手線でスタートし17年1月現在約3200車両・27000面まで拡大しているトレインチャンネルや、駅構内で大型ディスプレーが並ぶJ・ADビジョンなど、ジェイアール東日本エリアにおけるデジタルサイネージの展開事例を紹介しました。後者の代表であるJR品川駅の「自由通路」については「私の手がけた代表事例」と語りました。

 最後に、東京五輪に向けたデジタルサイネージに関する取り組みに触れ、訪日外国人がICカードを当てるとその国の言語で東京を案内する情報提供インフラの整備や、各種サービスをICカードで効率的に提供するIoTおもてなし環境の実現に向けた地域における実証などの事例を列挙しました。

 講演後の質疑応答では、「品川駅の自由通路は広告効果はあるのか」「トレインチャンネルのコンテンツは少し時間が短いのでは」「クライアントから見たデジタルサイネージの広告効果は他の媒体に比べて高いのか」など活発な質問や意見が出ました。

山本2 これに対し山本さんは、「2010年にアンケート調査をやった。広告到達率は約97%と高かった」「車内サイネージのコンテンツ長は60秒を超えると見てもらいにくいとの調査結果があり、最長60秒にしている」「効果指標については業界全体で整備中だ。トレインチャンネルは放映単価でみると他のメディアより単価が安く、コストパフォーマンスは高いと聞いたことがある」などと答えました。

 講演・質疑の後は、26号館のレストラン「森の風」に場所を移して懇親会を開催。山本さんを囲んでの懇談が続きました。

■山本氏の略歴 1982年早稲田大学法学部卒業、同年、日本国有鉄道入社。2003年、ジェイアール東日本企画に移り、駅構内におけるニューメディア媒体開発・映像制作に携わる。東京駅・上野駅リニューアルでは「情報発信スペース」開設を担当。現在はデジタルサイネージの開発と駅・車両におけるメディアデザイン全般を担当する。
デジタルサイネージコンソーシアム理事、日本鉄道広告協会 「技術開発委員会」副委員長、総務省「2020年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会」デジタルサイネージWG構成員、「公共情報コモンズ」作業部会委員を兼務