松浦さん

スマホを手に講演する松浦茂樹さん

 「メディアの将来像を考える会」は2018年3月13日午後7時から、早稲田大学26号館1102教室で第84回例会を開き、スマートニュース・メディアコミュニケーションディレクターの松浦茂樹さんをゲストスピーカーに迎え、「スマホ時代の情報の浴び方」と題して講演いただきました。

 松浦さんは、まずニュースアプリのスマートニュースについて、世界で2500万以上のダウンロードがあり、670万人が月に1回以上使っていると紹介。指標としては滞在時間を重視しており、快適さを重視したこだわりのユーザー体験(UX)を目指していると説明しました。編集者や記者はおらず、アルゴルズムによりニュース表示の優先度を決めているそうです。

 スマホ時代には、コンテンツ(ニュース)の作り手ではなくユーザーの視点からの情報の消費という観点が重要だと指摘。ユーザーにとってはいかに早く情報を得られるかどうかという快適性が大事だとして、ユーザーがページの表示を待てる時間は2秒までなどと言われていることにも触れ、スマートニュースをはじめとするプラットフォームとしても、いち早くコンテンツを届けることに最もポイントを置いていると強調しました。

松浦さん また、コンテンツが真実でなければユーザーの信頼を得られないとして、その意味ではニュースを制作するパブリッシャーだけでなく、ニュースを集めて掲載するプラットフォームの対応も問われていると述べました。具体的には、ヤフーニュースが3月、掲載した産経新聞配信の「沖縄米兵が日本人を救助した」との記事に誤りがあったとして、その記事をユーザーに提供した責任を認め謝罪した事例を挙げました。

 日本でも多くの人が危惧しているフェイクニュース対策としては、「ファクトチェック・イニシアティブ」の立ち上げに際し、スマートニュースはそのファクトチェックをアルゴリズムの開発などを通じてサポートしたいと語りました。

 松浦さんは、フェイクニュースを載せて米大統領選を左右したと非難されているフェイスブックが、人からの投稿(コミュニケーション)をニュースより上位に表示する方針を決めたことを取り上げ、ニュースのトラフィックが下がる結果を招いても、ユーザーに長い時間滞在してもらうことを優先したものだという見解を示しました。

松浦さん いわゆる「釣り記事」などでページビューを集める手法が少なくないことについて、松浦さんは、刺激的なコンテンツは注目を集めるものの信頼をなくすため、プラットフォームや広告主は離れると指摘。「パブリッシャーも信頼を取り戻さないといけない」と注文を付けました。

 さらに、ニュースを制作するライター個人が、企業を飛び越えてユーザーと直接コミュニティーをつくり始めている現状を紹介。「個人の時代が一気に来ており、注目を浴びている」との見方を披露しました。

 松浦さんは最後に、スマホ持代のコンテンツがテキストから音声・動画へ変化していると指摘。ただ、「音声のみで食レポは無理だ」「全文書き下ろしのテキストの方がリアルタイムの動画よりも速く読める」などの例を挙げ、コンテンツをそれぞれのケースに最適な形で配信していくことが、今後パブリッシャーに求められるとの考えを示しました。

松浦さん 講演後の質疑応答では、「インフルエンサー・マーケティングは両極を持っていると思うが、どちらへ傾いていくか」「ニュースをアルゴリズムで選ぶ際、価値観はどう処理するのか」「日本の伝統メディアは伝える力はどうか」など活発な質問が出ました。

 これに対し、松浦さんは「例えば、本を出すときにツイッターのフォロワーの数が1万人いないと出せないという話があったとしても、このフォロワー数は注目の数だが、信頼の数ではない。今は注目が来ているかもしれないが、これが続くかどうかは分からない」「アルゴリズム設計者の思想が大事になってくる。また、思想は方程式の係数のように、数字でチューニングして落とし込むことができる」「日本の伝統メディアは(伝える人に)年功序列がある。そこへネットネイティブの人が入ってくれば、コンテンツは最強なので、まだまだやっていける。1年生でもいいから、社内のフォロワー数の多い人にやらせたほうが良いと言っている」などと答えました。

■松浦氏の略歴
 北海道札幌市出身。東京理科大学卒業。システムエンジニアからキャリアをスタートし、2004年にライブドア(現LINE)に入社。ポータルサイト統括などを担当。2011年にコンデナストで『WIRED』日本版のウェブサイト立ち上げに従事した後、2012年にはグリーにて「GREEニュース」を主に統括。2013年3月よりハフィントンポスト日本版の初代編集長に就任。2014年9月よりスマートニュースでメディアコミュニケーションディレクターを担当。