野村 直之

AI研究の最前線について語る野村さん

メディアの将来像を考える会第63回例会は、8日(火)午後6時半から、メタデータ社代表取締役である野村直之さんを講師 にお招きし、早稲田大学3号館809教室で行われました。

テーマは「人工知能はメディアを支配するか」。2045年には人工知能(AI)が人間のすべての職業に取って代わり、人類を破滅の道に追 いやるかもしれないとの言説が流れる中、このテーマに関心を持った27 名(うちオブザーバー5人)が参加しました。

長年にわたりAIの調査と研究に携わってこられた野村さんは、AI研究が盛り上がった時期を、1950~60年代と80年 代、2012年以降のディープラーニングの3つに分類。ディープラーニングが猫の種類を、人間よりも精密に認識できる事例を示し、AIがすぐれた機能を発揮するにいたったことを紹介する一方で、総合的にはまだ人間の3歳児の認識能力にも遠く及んでいないことを強調されました。

IMG_1933人間に追いつき支配するには程遠い、つまり「2045年問題などはあり得ない」「安心してください」と断言しました。5W1Hのうち、WHYこそ人間がAIに対し優位に立てる鍵であり、「WHY?」が発せられるうちは、25年先でも50年先でも、AIによる失業の心配はご無用とのことでした。

人間の脳の働きや構造は未知な部分が多く、人間が脳の中で学習材料をメタ知識により加工・創造し、新しい知識を生み出しているような「継ぎ足し学習」が、ディープラーニングではほぼ出来ていないというのです。

このため、AIはせいぜい人間の弱い部分を補うために使われるのにとどまり、ジャーナリズムの仕事を補完する事例としては、画像認識が得意で5W1Hを的確に押さえられる取材用ドローンや、クレームに対する謝罪文を2、3分で仕上げるシステムを挙げました。

また、長い文章を40%に要約する機能も、意見優先か事実優先かで全く異なる要約文になることを示しました。つまり、人間が価値観や目的意識によるバイアス をかけて初めて、AIは有用になるわけです。多くの出席者にとってAIは、これまで言葉としてのみ接するだけでしたが、以上の講演に加え参加者からの質問や意見からAIの像 や将来展望がかなりはっきりしてきた2時間でした。

参加者

熱心に聴講する参加者

例会の後、午後8時45分ごろから「高田牧舎」で行われた2次会にも17人が参加、野村さんを囲んでの議論は大いに盛り上がり、午後10時散会しました。

出席者は下記の通りです。

【出席者】会員22人 池田暁子(イラストレーター)、井坂公 明(時事通信社)、石渡正人(手塚プロ)、稲垣太郎(朝日新聞社、早稲田大学)、逢坂巌(立教大学)、大塚敦子(アサツーディ・ケイ)、加藤孔昭(早稲田大学メディア文化研究所)、河村浩(イッツ・コム)、下村健一(慶応大学))、鈴木祐司(次世代メディア研究所代表)、中北宏八(朝日新聞社OB)、中田彰生(早稲田大学メディア文化研究所)、橋場義之(毎日新聞社OB)、坂東塁(楽天株式会社)、干場弓子(ディスカヴァー21)、松井正(読売新聞社)、松浦康彦(朝日新聞OB)、三上義一(目白大学)、水野泰志(東京新聞)、森治郎(早稲田大学メディア文化研究所)、山口実(日本 フォーム印刷工業連合会)、山本陽一(日本ケーブルテレビジョン)

【オブザーバー】5人 宇南山知人(小学館)、鈴木理詞(弘前大学)、高橋直純(エムスリー)、堀部直人(ディスカヴァー21)、松石悠 (ディスカヴァー21)

なお次回は2月開催の予定です。日程など決まり次第お知らせいたします。 本年はご苦労様でした。よいお年をお迎えになり、メディアの将来像を考える会ならびにメディア文化研究所活動へのいっそうのご協力をよろしくお願いします。(幹事=稲垣太郎、河村浩、中田彰生、森治郎)