土屋さん

地上波テレビの現状と未来について語る日本テレビの土屋敏男さん

 「メディアの将来像を考える会」は2017年11月14日午後7時から、早稲田大学3号館710教室で第80回例会を開き、日本テレビ・日テレラボ・シニアクリエーターの土屋敏男さんをゲストスピーカーに迎え、「制作者からみた地上波テレビの現状と未来」と題して講演いただきました。

 現場でバラエティ番組を作り続け、「電波少年」シリーズの「T部長」としても知られる土屋さんはまず、日本のバラエティの歴史について、現在最も人気がある「世界の果てまでイッテQ」と「鉄腕ダッシュ」の源流は、『お笑いバラエティ』であり落語や漫談の中継放送にあると振り返りました。その後1960年代には「シャボン玉ホリデー」などの米国番組の模倣に移り、70年代にはENG(Electronic News Gathering)カメラ(ハンディカメラ)というテクノロジーの進化に伴い日本独自の変化を遂げたと紹介しました。

 それが「欽ちゃんのドーンとやってみよう」で、カメラを屋外へ持って行きドキュメントで笑いを取る方式がバラエティを大きく変えたといいます。土屋さんは、萩本欽一はテレビの笑いがドキュメントであること、「テレビとは今起こっている何かを映し出すものではなく、これから起ころうとしている何かを映し出すものである」ことを発見した男であると述べました。

 続いて、ティーン層の「テレビ離れ」の理由について、制作者の立場から 1)テレビは暇つぶしに最適化しすぎ、より近い暇つぶしのスマートフォンに取って代わられた 2)バラエティの演出テクニックが落ちた 3)演者の世代交代が遅れた 4)テレビ局がクレームを恐れる余り新しいものに挑戦する力を失った―との四つの仮説を示しました。

 その上で、現在のテレビの最大の問題はT層(13歳から19歳までの男女)のテレビ離れだと指摘。残念ながら一度離れたT層は、20代、30代になっても戻ってこない可能性が高いとの見方を示しました。土屋さんは解決策として、ティーン向けのコンテンツがNHKも含め各局横断で見れるTVerのT層向けを作るよう提言。「テレビにも自分たちが面白いと思う番組があるということを、今刷り込まないと手遅れになる」と危機感をあらわにしました。

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「ハンディカメラの進化が、日本独自の番組作りを可能にした」と説明する土屋さん

 土屋さんは、今年11月3日は、ネットのAbemaTVがSMAPを脱退した3人が出演する「72時間ホンネテレビ」を配信し、フジテレビが「めちゃイケ」など20~30年続いたバラエティの終了を発表するなど、テレビにとって象徴的な日だったと語りました。

 最後に、Netflixやアマゾンプライムなどの海外プラットフォームの日本進出も踏まえながら、新しいコンテンツは予算ではなくアイデアで生まれること、テレビは「そんなものテレビじゃない」と言われるものを生み出して次の時代をつくってきたことを強調。何か新しいアイデア・テクノロジーを使ってクオリティー高く作られたときに、未来に向けた指針が示されるのではないかと締めくくりました。

 講演後の質疑応答では、「フジテレビが凋落している理由をどう考えるか」「ネットが出てきてから、テレビだけでなくマスディア全部が凋落している。ネットを中心に共存していくという展望はないのか」「AbemaTVの『72時間ホンネテレビ』は面白かったか」など活発な質問が出ました。

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「電波少年」シリーズの「T部長」として知られる土屋さんが、日本のバラエティー番組を分析した

 これに対し土屋さんは「フジはタレントはまず自分の局に出るのが当たり前の時代が長かったので、タレントバラエティの時代がシフトしても(他のことが)できなかった。日テレはタレントが出てくれないから、企画先行でやらざるを得なかったので、今それが力になっている」「基本的にはそうだと思う。(ただ)テレビの何時に見てくれとか、CMが挟まっているとか、これはそう簡単には急転回できない。最終的にはどういう形でいくのか分からないが、コンテンツの面白さは作る側の狂気に近い熱から作られるということは言える」「実はAbemaの『72時間』はほとんど見ていない。基本的には大きな事件だとは思うが、単発では意味がない。タレントを使って何を作れるかが大事。新しいものが生まれる可能性はあると思うが、萩本のような発見者、開拓者、狂気の制作者が現れるかどうかだ」などと答えました。

 

■土屋氏の略歴
 1956年9月30日、静岡市生まれ。1979年3月一橋大学社会学部卒。同年4月日本テレビ放送網入社。主にバラエティー番組の演出・プロデューサーを担当。「進め!電波少年」ではTプロデューサー・T部長として出演し話題になる。このほかの演出・プロデュース番組「天才たけしの元気が出るテレビ」「とんねるずの生ダラ」「雷波少年」「ウッチャンナンチャンのウリナリ!」「CS電波少年的放送局」「第2日本テレビ」「間寛平アースマラソン」「岡本太郎『明日の神話』修復プロジェクト」「NHK×日テレ60番勝負」VRドラマ「日照荘殺人事件」初監督ドキュメンタリー映画「We Love Television?」。