服部桂さん メディア文化研究所主宰「メディアの将来像を考える会」の第68回例会が、9月13日午後7時から早稲田大学26号館502教室で開かれ、インターネットを草創期からウオッチし、そのビジネスの最前線で活躍してきた元朝日新聞社ジャーナリスト学校シニア研究員、服部桂さんをゲストスピーカーに迎え、「〈インターネット〉の次に来るもの」と題して講演いただきました。

 服部さんはまず、インターネットが登場する前のコンピューターに関する話として、1960年代の人々が夢見た21世紀について、映画「2001年宇宙の旅」を引き合いに、IBMやATTといった大企業が未来でも幅を利かせていると皆がイメージしていたと指摘。しかし、結果的にはそのイメージとは裏腹に、巨大な“恐竜”は衰退して小さな“新人類哺乳類”がその主役を担うようになり、工業社会は終焉し、フリーソフトウエア時代が到来したと説明しました。  また、インターネットの原型であるARPAネットの始動や、パーソナルコンピューターの出現、自己増殖するプログラムの侵入により米国内の10分の1のコンピューターが停止した初の大規模インターネット事件など、主に70年代以降の米国内のインターネット史を振り返りました。

 次に、自らが翻訳を手がけ出版されたばかりのケヴィン・ケリー著「〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則」を紹介。「BECOMING(ビカミング/なっていく)」や「COGNIFYING(コグニファイング/認知化していく)」、「QUESTIONING(クエスチョニング/質問していく)」など、今後30年の間に私たちの暮らしを大きく変える12のキーワードについて解説しました。

服部桂さん ビカミングでは、常にアップグレードされ、“なっていく”というプロセスがインターネットであるとの捉え方を披露。コグニファイングでは今話題の人工知能(AI)について、人間とは違った知性であり、電気のようなサービス、道具であり、人間をエンパワーするものであるとの認識を示しました。クエスチョニングでは、AIは人間を支配するものではなく、AIに任せることとは別に、AIが設定できない「疑問」(課題)をどう見つけるかに人間は特化していくべきだと強調しました。

 最後にインターネットの次に来るもの、その未来は予測できず、自分たちで作っていくしかないと述べるとともに、デジタル社会は、近代社会が封じ込めようとしていた最もプリミティブで人間の感性に近いものを解放するので、ネットの創業者たち(「悪がき」)のような「真面目」ではない発想をしていけばよいのではないかと締めくくりました。

 講演後の質疑応答では、「この先の世界観、ビジネス観はどうなるか」「新聞の将来はどうなるのか」など多数の質問が出されました。

 これに対し服部さんは「近代の先はネオ中世へ。画一化、コピー化が行くところまで行って、近代が滅ぼした中世のふれあい、シェア、感性、人間性が新たに見出される。今までの常識が非常識になる」「ニュースはもっと自由なもので、『新聞紙』を作るものではない。ニュース自体をもっと考え直せばいい。ネットをやっている人たちは、ニュースはこんなに面白いと言っている。伝えたいという気持ち、原点に返って考え直してほしい」などと答えました。

 講演・質疑の後は、26号館のレストラン「森の風」に場所を移して懇親会を開催、さらに議論は続きました。