講演する山岸さん メディアの将来像を考える会の第66回例会が6月16日(木)午後6時半から早稲田大学26号館1102会議室で開かれ、電子チラシの先駆けとなった「Shufoo!」(シュフー)の産みの親である凸版印刷メディア事業推進本部長の山岸祥晃(よしあき)さんを講師に迎え、「チラシメディア〜その現状と未来」と題して講演いただきました。

 山岸さんはまず、シュフーが社内外で認知されるに至った苦労話を披露しました。凸版印刷に入社した1984年から、長く大阪で勤務していた山崎さんは、インターネットが普及し始めた2001年、社内ベンチャー案としてシュフーのアイデアを提案。この時は採用されなかったため、独自に事業を展開したところ、当時のブロードバンド拡大の波にも乗り、一定の成功を収めました。これが本社の関心を呼び、東京に呼ばれた山岸さんは、08年にメディア事業開発本部(現メディア事業推進本部)を立ち上げました。

 その後は事業拡大に奔走し、今や広告掲載企業は小売りからサービス業、メーカーまで3000社(約104000店舗)を突破。ユーザー数は月間750万人、PV数は同2億1130万にのぼり、女性向けサイトで国内3位にランクされるに至りました。

 山岸さんによれば、そもそも折り込みチラシは江戸中期の「引札」に起源を持ち、錦絵の伝統も採り入れて、明治・大正期にビジュアルな広告媒体に進化。その後、新聞販売店と折込会社のもとで、ビジネスモデルとして確立されたそうです。しかし、新聞購読の目的がチラシという主婦は依然多いものの、最近は新聞購読率の低下とともに、折り込みチラシ事業も不振に陥っているのが現状です。

 これに対し、電子チラシは「誰がどの範囲を見たか」という閲覧結果を“見える化”することで、購買行動との関連を探ることが可能です。この特性を生かし、山岸さんはシュフーを「自前のメディアで課金できるシステム」として確立させるため、様々な工夫を凝らしてきました。

 シュフーは利用者がアプリに郵便番号を打ち込むと、企業側が設定した配信エリアのチラシ情報が送られ、企業側はPV数に応じてお金を支払う仕組みです。この手軽さが受け、主婦の3人に2人がスマートフォン(スマホ)を利用する時代にあって、利用者は加速度的に増えました。メインユーザーは20歳代から40代の子持ち専業主婦ですが、時間に余裕のない働く女性が増えたことにも対応して、前夜のうちにチラシ情報を配信する仕組みも採り入れています。WEB限定チラシも登場し、山岸さんは「消費者のニーズとインフラの進化が相まって、今日の姿がある」と述懐します。

 ただ、ユーザーの約7割が新聞の非購読者だといい、従来の紙媒体の折り込みチラシとの共存が、課題にもなっています。シュフーも従来メディアとの提携を徐々に進めていますが、新聞社も含めて、まだまだ及び腰なのが現状だといいます。

山岸横 「電子チラシ事業は、エリア配信からパーソナルセグメント配信へと移っている」と指摘する山岸さん。シュフーでも個人の属性や嗜好をもとに、電子DM(ダイレクトメール)の配信に乗り出しています。また、スマホの位置情報から、自宅のエリアだけでなく、街なかでの情報配信や店舗内での行動分析も可能で、リアルとデジタルを融合した最適なマーケティング・プラットフォーム構築にもつながりそうです。自治体の広報や選挙、観光への活用も考えられるといい、電子チラシの将来性を感じさせる話でした。

 シュフーは既に単独で利益を出し、商業印刷という凸版印刷の本業に与える副次的効果も大きいとのこと。山岸さんは「国内の市場規模が縮小するなか、どんな業態であれ、業界を超えて消費者を取り込むことが求められている。我々も紙媒体を含め、従来メディアとのハイブリッドな施策を模索していきたい」と締めくくりました。

 講演後の質疑応答では、「グーグルやLINEも、レスポンス性の強みを生かした電子チラシ事業を始めているが、差別化をどう図るのか」「新聞など保守的な従来メディアにとって、電子チラシ導入のメリットはあるのか」などの質問が出ました。

 これに対し、山岸さんは「地域に根差した新聞販売店は、新聞を届ける役割以上のサービスを行える可能性を秘めている。メディア同士が提携することで、新聞社も率先して販売店の発展に資することができると思う」と答えた上で、「シュフーはすでにグーグルとも一部提携しており、保守的な社会を動かしていく仕組みを、メディア全体が育んでいければ」と応じました。

 講演・質疑の後は、26号館のレストラン「森の風」に場所を移して懇親会を開催、電子チラシの今後の可能性などについて議論が長く続きました。