メディアの将来像を考える会第64回例会は、27 日(水)午後6時半から、文化通信社常務、「文化通信」編集長の星野渉さんをスピーカーにお招きし、早稲田大学3号館802教室で開催されました。

開会に先立って、22日に急逝された昭和女子大学人間社会学部准教授・清水真さんの、メディアの将来像を考える会へのご貢献に感謝し、ご冥福をお祈りして会員一同黙祷を捧げました。

IMG_2535 のコピー星野さんにお話いただいたテーマは「出版業界2016年の課題と展望」で、出版界の現状と展望を、主として流通の側面から分析いただきました。衆知のように、日本の出版を支えてきたのは「取次」の存在。配本に始まり書店の「銀行的役割」、コンサルティングまで引き受け、他国に例をみない役割を果たしてきました。

星野さんによれば、書籍(book)と雑誌(journal)の取次が別になっている欧米と異なり、その両方を商っているのが日本の取次会社の特徴。業態としては少量多種の書籍は赤字、それを雑誌の黒字が支えてきたのが実情とのことです。

ところがここ数年、インターネットメディアの普及によって、特に雑誌の部数落ち込みが激しく、ビジネス的に雑誌に依存している取次業界に急激な業態悪化を招き、業界3、4位企業が破綻をきたすなど「崩壊している」と言っても過言でない状況が、具体的な数字と共に明らかにされました。

強力な取次システムがあっての日本の出版界だっただけに、その崩壊はかつてない衝撃となって、書店界を覆っているとのことです。書店の減少、大書店への集中化が急ピッチで進んでいることが詳しく説明されました。そうしたことから、出版業界は「近未来」ではなく、まさに今年2016年に浮沈の時を迎えている現実が浮かびあがりました。

参加者

出版界の最新事情とドイツでの取り組みについて、熱心に聞き入る参加者

それにどう対処するか。星野さんは参考になりうる事例として、ドイツの最新事情を紹介されました。インターネットへの危機感を共有したドイツの大手出版4社とドイツテレコムの連携によって、電子書籍プラットホーム「トリノ(tolino)」が開設され、アマゾンのキンドル以上に普及し、国内書店に活況をもたらしているとのことです。そのほか、書店内のカフェ展開などさまざまな試みが紹介されました。

報告後は、「日本の状況は」「その状況を打開するために」を強く意識した質問や意見が交換されました。 2時間以上にわたっての報告と討議の後、場所をレストラン「高田牧舎」に移して延長戦。星野さんを囲んで14人が参加しました。 出席者は下記の通りです。

【出席者】会員19人 青山友子(文化通信社)、池田暁子(イラストレーター)、井坂公 明(時事通信社)、石渡正人(手塚プロ)、稲垣太郎(朝日新聞社、早稲田大学)、大塚敦子(アサツーディ・ケイ)、淤見守里(WOWOW)、加藤孔昭(早 稲田 大学メディア文化研究所)、金沢浩明(日経新聞社)、鈴木祐司(次世代メディア研究所代表)、高久陽男(朝日新聞社OB)、竹之内満(毎日新聞社) 中田彰生(早稲田大学メディア文化研究所)、根本正一(日経新聞社)、松井正(読売新聞社)、三上義一(目白大学)、水野泰志(東京新聞)、望月義人(朝日新聞社OB)、森治郎(早稲田大学メディア文化研究所)

【オブザーバー】4人 市川誠(エンジニア・ビジョン・リサーチ・インスティチュート)、佐藤昌幸(ディスカヴァー21)、中村修子(出版デジタル機構)、松原史与志 ((ディスカヴァー21)

次回は4月の予定です。テーマ、日程など決まり次第お知らせします。(幹事)