(4)【質疑・応答】ニュースメディアの未来図

■組織ジャーナリズムの意味とは?■

【質問者】
シンポ2人2 メディアが会社や組織、ブランドの中で仕事をする意味、組織としてニュースメディアをやる意味をどこに求めればいいか。

米重:
 個人が毎日継続的に、サービスとしてニュースを持続可能な形で出し続けるのは不可能です。組織には意味があり、毎日永田町や兜町の動向を追い、定点的に情報をウオッチし重要な情報を届けていく。情報の中身というより、毎日定期的に届けるサービスの形は、やはり組織でないと維持できず、役割は変わらないと思います。

柴:
 音楽の世界の組織としては、まず大きな権利団体があり、次にソニーやワーナーなどメジャー4社、そして山ほどのインディーレーベルがあります。しかし、リスナーは基本的にはアーティスト個人のファンになる。ジャスティン・ビーバーが好きだから彼の曲を聞きます。ソニー・ミュージックの曲をすべて聞きたいファンはいません。もちろんマイケル・ジャクソンの時代もそうだったわけですが、かつてはCDの流通網を握っているメジャーレーベルの政治力が大きかった。対して、今はジャスティン・ビーバーのSNSやYouTubeチャンネルのほうが強いメディアパワーを持っている。それでもジャスティン・ビーバーはメジャーレーベルに所属し、彼とマネージャーが会社内に立ち上げたレーベルから新人を紹介してブレイクさせている。レーベルの意味はここ10年で大きく変わりました。
 もう一つ、Spotifyではプレイリストで曲を聴く人が増え、プレイリストを編集するキュレイターの影響力も増えています。「ラップジーニアス」というプレイリストには、400万人ものフォロワーがいます。そこで紹介されると、その1曲目は400万人が再生するので、再生回数が収益に直結する世界では、大変な政治力を持ちます。
 ここで起きている変化はどういうことかというと、個人が組織よりもブランド力を持つようになってきている、ということです。もちろん一人でできることには限界があるので、それを支えるチームとして組織がある。そして、メディアのブランドはレーベルやプレイリストのようなものになっていくのではないかと思っています。


久保田:
 チームの意味を、僕は自分の好きな欅坂46で学びました。グループになると1人1人にファンが付き、そのことで一つのテレビの冠番組ができ、ミュージックビデオができ、曲が付く効果があります。2016年の音楽ランキングはAKB、乃木坂、嵐と全てグループが占め、個人はいませんでした。握手会を例にとっても、大人数の方がセリングパワーがあります。

■「見出しには財産権」 知財高裁で逆転■

【質問者】
 NewsPicksは新聞社などからニュースの提供を受けているが、お金を払っていないのか。

久保田:
久保田 直接記事を買っているところと、買っていないところに分かれます。ただ、どのサイトの記事でもピックはできる。買っているニュースは記事をサイト内で読めて、買ってないところはリンクで飛ばす仕組みです。

【質問者】
 読売新聞は確かかつて、勝手に記事にリンクする見出しを集めた神戸の会社を提訴しましたが、これは結果として勝ったのか。

松井:
 知財高裁で逆転で、事実上勝訴しました。不法行為と認定され、見出しには財産権があるとされました。

【質問者】
 例えばGoogleニュースは同じようにリンクを貼っているが、これも闘えばお金を取れる? そもそもGoogleニュースはお金を今払っているのでは?

松井:
 いえ、Googleニュースは払っていません。

柴:
 無料でリンクを張られても、大した金額にはならないと。

松井:
 今日出たバリューギャップ問題があり、広告モデルでも金は得られるが、非常に少ない。しかし、これが課金なら収益率が一桁上がる。無料のポータルやキュレーションアプリに出すのとは違うビジネスモデルが、日本にはまだあるかも知れないと感じました。

■ライブと組み合わせて機能し始めた投げ銭モデル■

久保田:
 NewsPicksを参考にできるとすれば、ピッカーがいることで編集にファンがついたこと。記者がピッカーのような存在になり、その記者をフォローする仕組みがあれば、機能するんじゃないでしょうか。

松井:
 元日経新聞の渡邉正裕さんが作られたMy News Japan(マイニュース・ジャパン)は、有料会員は2千数百人ですが、ライターを金銭的に応援する投げ銭モデルの仕組みもあり、成り立っていますね。


久保田:
 投げ銭モデルはインターネット登場からずっとあったものの、機能するようになったのはライブができてからです。技術的に進歩し、ライブと組み合わせることで可能性が開けたのです。

質問者】
 記者は作家と違い、今日はこの事件に大勢でフレキシブルに動くといった、記名性がない仕事にも価値はある。記者を抱える会社が結託し、一斉に値上げする方向もあるかなと。ニュースを売る値段を皆で上げるような可能性はないのか。

松井:
 「配信料を一斉に値上げする、できないなら全社が一斉に配信をやめる」というのは、かつて私もよく夢想しました。もちろん難しいし、横並びで価格拘束して値上げするのは、独禁法に抵触すると思いますが。

久保田:
 記者には価値が当然あり、特にジャーナリズムという言葉が象徴するように、公益を果たす意味でパブリックに対する価値が極めて高い。しかし、それが金銭的価値に還元されないのが問題だと思います。

(5)個人への最適化か、森羅万象を伝えるべきか